2007/04/18

Lisa 3

 
午後になるとギターを手にとって、
小麦畑に向かう。
ベッドにひとり、君を残して。

風がざわざわと、かき立てる。
指に少し、力が入り、
ギターの音色が響き出す。

君を守るためなら、
全部なくなってもいい。

穂がゆれる方向も、
ギターから出る音も、
不安と幸せの混じり合った感情も、
毎日、毎日偶然が折り重なって、
できているんだよ。

失っていいものなんか、
何ひとつないのに。

でも時々、ひとりになりたくなる。

偶然も何もない場所で、
君のことだけを思い出したくなる。
 
 
ずるずるずるずる
 
ずるするずる
 
するする

 

2007/04/15

Lisa 2

 
パンの少し焦げたところをかじって、
目が覚める。

見るもの全部がまぶしくて、
ずっと遠くの方へ来てしまったよう。

ミルクの味も強すぎるぐらい、
この場所が夢のよう。

ぼやけた時間の流れの中で、
君の形を焼き付けようとしているけれど、
いすに座っている時でさえ、
とても、とらえきれない。

一瞬が永遠で、永遠は短くて、
ずっとこのままがいい。

朝食が終わる頃にはまた、渡り鳥が飛び立つ。
100年も1000年も越えて、
この朝を運んでほしい。

光が旅をするように、
この時間もきっと、
どこからの贈りものなのだろう。
 

2007/04/10

Lisa

 
思い返せば、幸せはずっしりとして、
土のようにあたたかい。

水が流れるように、小麦はゆれて、
風はからだを持って知らせにくる。

信じられないことが、毎朝起きている。

白い指も、白い歯も、白い足先も、
はかないほど、透き通っているのに。

毎朝起きると、奇跡が起きていて、
君が横で眠っている。

白いシーツの上で、光を浴びて、
長い髪が小麦色に輝いている。

川の上の船にいるように、
ゆっくりだけど、
はっきりと向かっているのを感じている。
 

2007/04/09

カザミドリ

 
人生のまとめって難しいけれど、
空が青くて、全部打ち上げてみたくなる。

写真や日記でおさまらないことを、
ドラマで見たり、映画で見たり。

全部思い出みたいで、全部行ったことあるようで、
生まれ変わるって思った時は、風になっていた。

部屋は全部そのままで、越えて行く。
青い空と海と丘の間を抜けて行く。

何を持って行かなくちゃいけないんだろう。
どうしてこんなに焦っちゃうんだろう。

雨が3回も降った日も、
ライム色した夕日も、
真っ暗になった劇場も、
春の嵐に吹かれて、カザミドリが何度も裏返る。

ピアノの音で、小さく踊るよ。
別れの場面も、少し跳ねるよ。

自分に置き手紙を残してね、
透明になって、足だって、家だって、思い出だって、
カラカラと、風と緑が巻き込んで。

海を越えて、空を越えて、
その先の、青い芝生の少し上で、
今日は眠るよ。
 

恋愛論

 
好きって、
マヨネーズのスイートな、
きいろい感じ。