2007/02/18

マシマロ(しろ)

 
ぴっちゃぴちゃ、雨のふるひびき。
水がへやに、つく音。
窓にぴちゃぴちゃ、寄りかかる。

ぴちょっと、はだがふれて。
手にみずかき。
雨に帰る。

ゆびさきに、しろいマシマロ。
泳いで水に帰る。

くちにぴちゃぴちゃ、
マシマロ。
お先にぴちゃぴちゃ、
マシマロの海。

カーペットの上を、
マシマロの波がおしよせる。
ぴちょぴちょのひびき。
 

マシマロ(くろ)

 
忘れてしまいたいことが、あるのですが。

−−

一枚の紙切れに、身の毛がよだつ。
そんな瞬間もあるのです。

たった一言が、わたしの中での最大の事件になり、
わたしは全身から出て行きたくなった。
土をめくり、深い穴を堀り、
わたしはその中に飛び込みたかった。

そうもできずに、のうのうと暮らしている。

意識の奥底に紙切れを沈め込んだまま、
朝のトーストを焼き、コーヒーを口に運ぶ。

心から、忘れてしまいたい。

そう思いながら、あついあつい口の中に、
マシマロをほおばり、口をつむぐ。
真っ黒に焼けこげた骨を想像しながら、
死ぬことのイメージを、必死でしている。

灰皿の紙が燃えて、雪も焦げて、
むき出しの地面の続く地平線にたどりつく。
脳の肌には何も残らないように、
何も残らないという意識も、消さなければ。

じわじわと、真綿が縮むように、
口の中のものが、消えていく。
それと同時に、わたしは自分自身が縮んで行くのを感じた。